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角丸飾り

ジャーナル No.64

全国セイフティネットワーク集会(09.2.23)概略

1.連合本部提起
●2008年連合安全衛生調査の結果について

・安全衛生委員会の定期開催で活性化がはかられると問題の減少につながっている。
・労災発生は「定期開催事業場」で多くなっているが、抑制効果はある。
・リスクアセスメントも定期開催事業場で実施され、労災の抑制に影響しているが、十分効果を上げていない。
・メンタルヘルスの相談受理や対策も定期開催事業場で高い比率。→連合HPにPDFファイルで公開する。

●連合労働安全衛生取り組み指針について

・09年4月からの11防を具体的に進める連合の指針
・今後の重点対策として、◎安全衛生委員会を中心に職場点検、◎労災防止指導員活動を点検する(定数調整 現状の労:使は3:1を6:4程度に調整)

2.講演1「業務請負労働者・派遣労働者の労働安全衛生と労働組合の対応」

国際産業労働調査研究センター代表 木村 大樹


・派遣と請負の違いは「誰にどのような責任があるか」によって全く違う。特に「指揮命令」することによって責任(たとえば安全配慮義務)が発生するが、派遣業者は十分理解していない実態がある。
・偽装請負は派遣法・労基法・安衛法・男女雇用均等法など多くの法に違反する。業者の選定に当たって労働組合が「良好な事業者」の選択に関与すべき。
請負の場合、安全配慮義務は元方事業者に生ずる。「安全衛生協議会」の設置や「安全衛生計画」が必要。
・派遣労働者の安全配慮義務は派遣先にある。安全管理体制は派遣を含めた数で考えなければならない。「雇い入れ時の教育」「一般健診」は派遣元が行うが、派遣先との連携が必要(設備・作業内容等)。
・請負・派遣ともに責任所在が不明確な場合が多く、労災発生時の対処ルールも確立されていない。労働組合は「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」の遵守や、派遣労働者に対する安全衛生に関する指導・援助・教育などを核に津に実施させる監視を強めるべき。
・特にメンタルヘルスのまん延を考えると、衛生管理体制の確立・推進が急務。

3.講演2「事業場におけるメンタルヘルス対策と労働組合役職員の役割」

京都文教大学臨床心理学科教授 島 悟

●職場のストレスとメンタルヘルスの概要

労災申請件数で精神障害が身体疾患を超えた。精神障害の労災認定については従来は中高年の問題だったが、今は30代が最多。いわゆるロストジェネレーションのリスクが高くなっている。

●メンタルヘルス対策

労組の役割として事業主がメンタルヘルス指針を遵守しているかチェックし、仮にしていない場合、労組が働きかけることが必要。労組はケアを行う一員(サポーター)として機能すべき。

●職場復帰について

・休職中、復職早期は自殺リスクが大きい。長期欠勤による家庭の問題も起きてくる。労組の支援のあり方が重要。
・復職問題の背景として職場環境の激変・厳しさが挙げられる。復職の条件として、例えば通常業務が出来るところまでに改善して欲しいと企業側が思っていても、そのできるところまでがどこまでなのか基準が判らず、本人が狭間で苦しむことになる。
・休職はゆっくりすればいいということではなく、やはりその意識改革をして、休職の前半は「休養」、後半は「リハビリ」とすることが必要。
・復職をめぐる最近の動きとして、会社に頼らず外部機関における復職支援を利用するというふうに変わってきている。
従来、メンタルヘルスに不調をきたした労働者に対しては企業が支援をしてきた。しかし、現在は企業の支える力が脆弱化し、職場のメンタルヘルスが急激に悪化した。労組の役割はそういった労働者を支える環境を整備し、繊細な対策を講じることだ。なぜならこれは命に関わる問題だからだ。

第14回 北海道ブロックセイフティーネット集会

3月31日、札幌市内ホテルで「第14回北海道ブロックセイフティーネット集会」が開催され、約80人が参加しました。
主催者の当センター工藤理事長は、「安全衛生活動についてはそれぞれの単組・職場の中で取り組んでいただいていると思いますが、やはり多面的、総合的な対策を講じていくことが労使間に求められていると思います。この集会を契機に、安全衛生について共有化をしていただき進化をしていただける機会にして欲しい」と挨拶をしました。

講座の1番目は「POSITIVEプログラムによる職場の労働安全衛生活動の進め方」で、講師は(財)国際労働財団 現地支援グループリーダーの鈴木 宏二 氏で、当センターもマネジメント・システムを中小の職場でも実施しやすくする観点で、今年度から試行的に取り組みを始めた“POSITIVE(労働組合主導の参加型安全衛生向上プログラム)”の考え方、取り組み経過、セミナーの実践など、具体的な東南アジアでの取り組み経験を中心に、解説しました。

その中で、@プログラムは産業にあわせた内容に自在に変化できること。(すでに鉱山・電力・病院などに実績がある) A作業改善アクションチェックリストにより複数人の観点から好事例を探し、低コストで普及できること。(通路確保・道具整理・スイッチ表示など具体的に) Bセミナーは導入のゲームをするなど完全参加型ですすめるべきこと、など、今後の取り組みに参考となることが多くありました。
ただ、まだセミナーテキストの日本語版ができていないため、今後連合本部とも連携して、完成に当センターも協力することにしました。

第2講座は「職場復帰をめぐる諸問題−『うつ』による長期休養者を中心に−」と題して、講師は札幌心身医療研究所所長の久村 正也 氏から、まん延するメンタルヘルスについて、職場復帰に関する厚生労働省指針を中心に、実践上の留意点と、外部資源(機関)の活用が広がってきていることなど、具体的な提起がありました。(Journal−63号参照)

特に、「不振・不眠・倦怠・減退・低下」などのキーワードと“日内変動(朝・午前がつらく夕方には回復)”などの変化を見逃さないことや、症状の回復と職場復帰では80%以上の回復を目安とすべきであることなど、具体的な指摘がありました。 当センターでは経済状況の激変に際して、職場環境が悪化することを懸念し、特にメンタルの問題を今後も継続して取り上げる予定です。

POSITIVE 解説 その3

重要な役割をするアクションチェックリストといわれるものです。書かれていることは非常にシンプルなことです。例えば「移動しやすい通路を確保し、明示します」これは改善のアクションになります。このチェックリストを持って現場に行くわけです。
現場に行って、どういうことをイメージしているかということはイラストになっていますので非常にわかりやすいのですけれども、現場が非常に整理整頓が良ければ「ここはこの改善をしますか」といわれても「いいえ」にチェックすればいい。 ただ、それだけで終わるのではなく、どのようにいいかということを具体的に書いておきます。そうするとそこで改善事例の収集ができる。

それで、改善が必要だったらその範囲をチェックします。これを複数の人間でやりますと「はい」というところにたくさんチェックがある項目を優先的に取り入れていけばいいということがおのずとわかる。ですから、これは改善指向型のチェックリストだということになります。

チェックリストの項目がそれぞれ、たとえば、「保管」と「移動」ということになっていますけれども、先ほどの六つの領域について、それぞれ五つないし六つくらいのチェック項目になっています。チェック項目がある意味『教材』と考えていただいていいかと思います。 実際にこのPOSITIVEというプログラムが生まれてきた歴史的背景ですが、一つは現場の改善を自主的に、小グループの討論を中心にしてやりましょうとILOが最初に始めたのが、1980年代に、中小企業向けに始めた『ワイズ』というプログラムです。 これは中小企業の事業主、それから労働者を対象にしたもので、フィリピンで始まってタイ、ベトナム、ラオス等で展開をしてきています。これは、中小企業の製造業向けに始まったものですけれども、その考え方をベトナムでは農作業に適用してみようというのが始まりでした。それが1992年ころだったと思います。

そしてこのPOSITIVEが1994年頃から始まっています。これを積極的に進めているのが、国際労働財団・JILAFと呼ばれている組織です。各国と一緒に労働組合がイニシアティブを取ってそういう職場の環境改善を図る。と同時に労働組合の組織率を上げるということを取り組み始めています。

いろいろなプログラムがあるのですが、全部共通の原則にのって取り組まれています。 一番最初がワイズで始まりましたから「ワイズ方式」と呼ばれているのですが、このPOSITIVEもワイズ方式の一つといっていいと思います。参加型といって、いかに参加を促進していくかということですけれども、ここに六つの基本原則というのが書かれています。

<地元の慣行の上に作る>
<改善実績、実際に改善をされたということに焦点を当てる>

改善をどんどんほめていくということになります。

<労働条件と他の経営目標を結び合わせる>

労働条件を改善するということが、実は経営者にとってもプラスになるんだということを強調するということです。

<実行して学ぶ>

座学だけではない。自分たちで実際に汗をかいて学ぶということですね。

<他の職場と経験を交流する>

こういうトレーニングを一つの工場の中だけで、自社の中だけでやってもいいのですが、実際にトレーナー養成をする場合にはいろいろな事業所からリクルートをしてきますのでそういった場面で他の職場との経験を交流することができます。

<労働者の参加を促進する>

こういう六つの原則にのっています。

角丸飾り

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