北海道勤労者安全衛生センター トップページ安全センターについて > 2010年度活動計画

角丸飾り

2010年度 活動の進め方

T. 活動の基本

1. はじめに
(1)この10年間の安全衛生に関して

 2010年を機に安全衛生の10年間をふり返ってみたいと思います。
 この間の国内経済状況は2000年のミレニアムから回復しはじめましたが、小泉改革の「雇用なき景気回復」と表現されるように雇用の非正規化が大きく増加し、格差が大きな社会問題化しました。
 安全衛生での大きな出来事は、まず2005年の労働安全衛生法の改正があげられます。これは、2007年に批准を予定されていたILO187号条約「安全で健康な労働環境を促進する労働安全衛生の枠組条約」の国内環境整備のために、それまでの「規制文化」に「予防文化」を加える画期的な改正となりました。また、2008年3月には「安全配慮義務」を明記した労働契約法が施行されました。そして同じ2008年には第11次労働災害防止計画がスタートして、OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)の導入による安全衛生における予防措置優先の時代に入っています。
 労災死亡事故や休業事故は、ここ数年減少傾向にあり、あたかも職場は安全度が増したかのようですが、労災の現場が、下請けや非正規労働者に移っただけという指摘もあります。12年連続して自殺者が3万人を超え、職場ではメンタル不全が増加する傾向は止まっていません。
 私たちはこのような現状を見据え、“静かな労災”と言われるハラスメントを含むメンタル不全問題と、非正規化がもたらす職場安全意識と技術の低下、65才雇用延長に伴う健康と安全の確保に重大な関心を持ち、北海道の労働災害の防止・事件の減少と安全衛生レベルの向上に努めなければなりません。

(2)北海道の労働災害の状況

 2009年は労災事故死亡者数は過去最小の69名(2009年12月暫定値)となっていますが、建設業やサービス業では前年比増となっており、今後も各職場での点検活動の強化や地道な活動を積み上げる必要があります。また、道内の休業4日以上の労働災害は前年より約447件減少して、年間で6,223件(暫定値)となっています。
 しかし、健康診断の結果による有所見率は全国平均を超え、相変わらず50%を超えています。したがって、血圧・肝機能・血中脂質・血糖などの生活習慣病に関する啓蒙と、継続した安全衛生活動が必要です。第11次防で掲げた死亡者数20%減、死傷者数15%減、健診の有所見率減少へ転化の目標達成に向け、さまざまな努力を積み重ねなければなりません。

本道における労働災害発生状況 別紙

(3)職場環境配慮義務の周知とメンタルヘルス対策の必要性

 ストレス・メンタルヘルス問題は、深刻な状況が拡大しています。2009年4月にメンタルの労災認定に関わる「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針の一部改正」があり、ハラスメントなどの認定が強度アップされましたが、認定自体は全国で約1千件になる精神疾患に関する労災申請の約3割しか認定されず、多くが業務以外の起因や個体側要因に帰されています。
 メンタル不全問題への対応は、従来の対処的な取り組みから、「職場環境配慮義務(安全配慮義務に含む)」の観点から、予防と連鎖反応の防止を重点にした職場全体のストレス調査・点検の取り組みが重要になっていますし、労働基準法改正(2010.4.1)で強化される労働時間管理強化とあわせ、過重・長時間労働の撲滅や産業医面談のあり方、さらには治療期間の補償ルールの明確化や、スムーズな職場復帰のための社会的なサポート制度、再発防止を含めた職場復帰プログラムの作成などを緊急に充実する必要があります。

 安全センターは設立の主旨である「職場の安全・衛生対策、健康増進、労災・職業病、環境保全対策等の調査、研究、と予防対策等の活動」を使命として、「働く者の安全と健康を第一に」考え、実践していきます。
 今後も会員各位と協力し、設立の原点を再確認し、職場で働く仲間の安全と健康確保など、職場の要望と期待に応える取り組みをさらに強化していきます。

2. 職場における安全衛生活動の活性化

 改正労働安全衛生法により、予防文化の普及のため、労使の「責任ある自主的取り組み」がこれまで以上に求められ、安全衛生委員会の定例開催や活性化等、労働組合にも大きな役割が期待されます。
 もちろん、働く者の安全と健康確保は企業の責任において実施されなければなりません。  しかし、職場実態を一番よく知りうる労働組合が点検し、改善していく体制がなければ実効あるものにならないことも明らかです。

3. 安全衛生活動を推進するネットワークの充実

 北海道勤労者安全衛生センターが、各会員団体の職場や地域における活動を支援するためには、連合などの労働組合や労働福祉事業団体のみならず、各種の労働安全研究機関、産業医などの医師や学者、関係行政機関、産業保健推進センター、労災防止指導員などとのネットワーク活動が重要です。
 これらの連携で、専門家の知識・智恵を吸収する機会を設定し、全道規模の研修会・担当者会議、地域健康セミナーなどの充実を図り、活動をさらに広げなければなりません。
 また、連合本部雇用法制対策局や全国安全衛生センター連絡会を始め、各地の安全衛生組織と連携し、研修会等への参加を通じて相互交流・情報交換を深めることも重要です。

4. 労働安全衛生管理やメンタルヘルスなどの調査・研究活動の継続

 職業病対策(腰痛・化学物質管理、VDT障害、振動病、じん肺やアスベスト問題等)についての継続した調査研究や、生活習慣病の予防の調査・研究や啓発活動などについても取り組むため、医療生協・緑愛病院(会員)の「職業病センター」は、働く者にとって大きなよりどころとなります。これを積極的に活用し、予防と治療の両面から労働者の健康を守る取り組みを一層強化していくことが必要です。
 職場におけるストレス・メンタルヘルス対策は依然として緊急課題となっており、今年度も北海道産業保健センターや日本産業カウンセラー協会などと連携し、職場におけるメンタルヘルス活動の充実をはかることが重要です。

5. 地域や職場活動への貢献とホームページの充実

 労働安全衛生法や関連する情報など、職場の安全衛生活動に必要な情報をタイムリーに提供するため、機関誌「安全衛生Journal」や報告書等の刊行物の発行、資料や教材の収集に努めル必要があります。また、職場・地域での活動や調査・研究を通じて政策課題を掘り起こし、連合北海道など関係団体と連携して、その実現に努めなければなりません。安全センターのホームページは、定期的な更新に努め、E−mailによる「北海道安全衛生センター情報」の不定期発行も継続すべきです。

U. 具体的な活動目標

1. 調査・研究活動
(1)安全衛生活動に関する実態調査の実施

 連合の第6回調査を参照しつつ、安衛法改正後5年経つ安全衛生活動の実態と、労働組合としての取り組み(特に安全衛生委員会活動)などの態勢の課題や、ストレス・メンタルヘルス対策やリスクアセスメント・マネジメントシステムの展開などの具体的課題について調査を実施します。
 また、「非正規労働者の労働安全の実態調査」の第3回目として、連合北海道の非正規労働センターなどと連携した調査に取り組みます。

(2)安全衛生委員会の活性化に向けた取り組み強化

 労働組合の点検機能、職場実態を踏まえた提案機能を発揮する必要があります。そのためには職場における安全衛生委員会(または衛生委員会)活動の見直し・充実を労働組合が提起し、実践していくことが必要です。「連合労働安全衛生取り組み指針」に沿って、安全衛生委員会の設置や活性化を進めます。安全センターとして、幅広く好事例を紹介するなど構成産別や地域組織に役立つ資料・情報を積極的に提供し職場の安全衛生活動をサポートします。

(3)労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)に沿った「POSITIVE」のトレーナーセミナーの開催

 労働安全衛生リスクアセスメント・マネジメントシステム(OSHMS)に関しては、連合第6回安全衛生に関する調査にもあるとおり、約45%が実施しているに過ぎず、特に99人以下の事業所ではまだまだ普及率・理解率が低い状況です。今年度も(財)労働科学研究所・連合本部などと連携し、OSHMSを各職場段階でより実践的な取り組みが出来るようにするための調査・実践研究に取り組みます。
 OSHMSを職場で実践するためのノウハウの一つとして、PDCAをベースとする簡易な「POSITIVE(労働組合主導の参加型安全衛生向上プログラム)」について基礎学習と具体的な指導者(職場トレーナー、コア・トレーナー)の育成に取り組みます。

(4)ストレス・メンタルヘルス対策

 ストレス・メンタルヘルス対策は引き続き職場の緊急課題となっています。09年度も、全ての事業において、メンタルの病理・対処や職場復帰などの知識を深めました。
 今年度も、「産業医による面接指導」や労働時間管理の徹底など、職場での取り組みに重点を置いた対策の充実をはかるために、会員職場でのセミナー等への講師派遣や、日本産業カウンセラー協会と連携して、未組織労働者も視野においた専門家による「無料電話相談コーナー」を継続していきます。
 また、北海道産業保健センターの「産業保健研修会(無料)」を活用し、実践的なメンタルヘルス対策の中心となる人材の育成に努めます。
 また、公務職場におけるストレス調査を、医療生協緑愛病院職業病センターと連携して実施します。

(5)医療生協の職業病センターとの連携強化

 医療生協・緑愛病院(会員)の「職業病センター」の活動には、働く者の期待は大きいものがあります。職業病センターでは、とくにじん肺・アスベスト、振動病、メンタルヘルスに関する専門医を配置していますが、それ以外の職業病関連疾患についても諸検査、診療態勢が整備されています。予防を含めた積極的な活用が出来るよう構成産別とも協力し、取り組んでいきます。また、同センターの全道における地域活動についてもサポートしていきます。

2. 研修・セミナー活動の拡大

 「団塊世代」の大量退職の一方で若年者の職場定着率の悪化や雇用の非正規化が進展し、職場の技術的な伝承が危機に瀕するとともに、「安全に関する技術と経験」が急速に失われています。今後も産別・地域の研修会やセミナーを通じ、安全衛生のレベルの維持を目的とした研修の実施に努めます。
 研修会・セミナーについては、各産別・単組・地域での開催を積極的に要請するとともに、講師派遣等について安全センターとしての全面的な支援体制を確立していきます。
 同時に、これらが労使共同での取り組みとなるようにすることも重要です。それぞれの労使関係があり、画一的にはなりませんが、条件の整う産別・単組では、労使セミナーの開催や以下の連合・安全センターの各種研修・セミナー活動について、労使での参加を検討するよう促します。

(1)連合全国セイフティーネットワーク集会への参加

 第69回中災防全国産業安全衛生大会が10月に福岡市で開催されます。また、連合全国セイフティーネットワーク(SN)集会が東京で開催される予定となっています。  連合本部と連携して、全国SN集会の成功と、北海道の労働安全衛生レベルの向上に資する取り組みを進めます。

(2)北海道ブロック・セイフティネットワークや全道安全衛生担当者研修会等の開催

 北海道ブロック・セイフティーネットワーク集会は産別・地域の担当者と労災防止指導員が集い、北海道における現状の把握と今後の方向について議論する場であり、連合北海道と共催の全道安全衛生研修会(担当者会議)は労働組合の安全衛生対策を点検する任務を持っています。
 ともに重要な会議であることを認識し、現場視察を含めた内容とするとともに、知識の体系化と実践に留意した取り組みを進めます。
 今年度は、安全衛生担当者会議を2回開催し、新任役員研修と安全衛生委員会の実践研修に取り組みます。

(3)地域における安全健康セミナーの開催

 各地域における安全・衛生セミナーの取り組みは、拡大し定着してきましたが、昨年度は諸般の事情で計画を下回りました。今年度は、「安全衛生委員会の活性化」、「OSHMS導入」「メンタルヘルス対策の促進」などの地域セミナー開催について、連合北海道の地協等と協力して取り組みます。
 セミナーには、各地域・地区の連合加盟産別・単組や労災防止指導員、関係団体をはじめ、企業等の参加を呼びかけます。また開催にあたっては、地域産業保健センターや労基署と連携していきます。
 中小職場の安全衛生と健康管理に焦点を当て、メンタルヘルスや産業医制度の共同選任事業、職場環境改善のための支援施策などに対する理解を深める内容も検討します。

(4)地域産保センターの活用や中央労働災害防止協会北海道安全衛生サービスセンターの連携と支援

 各地域において安全衛生セミナー活動が積極的に取り組まれ、これまで以上に地域産業保健センター等との連携が強化されました。今年度も同センターの運営について理解を深め、連携を深めるよう努めます。また、中央労働災害防止協会の北海道安全衛生サービスセンターや北海道労働局基準部とも連携を強め、活動幅の拡大をめざします。

(5)ストレス・メンタルヘルス対策セミナーの開催

 ここ数年間で会員産別・単組や地域において、ストレス・メンタルヘルスの取り組みが一段と強化されています。ストレス・メンタルヘルスに関するセミナーの開催や情報提供など各会員の要請に基づく様々な形での取り組みを強化していきます。
 また、メンタル不全問題について発見から治療・職場復帰・労災認定・精神疾患と法律など、トータルに理解するための資料を作成します。

(6)労災防止指導員活動の強化

 中小職場の安全衛生活動の強化に向けては、労災防止指導員の役割は極めて重要なものがあります。今年度も「労災防止指導員連絡会議」の開催など地域や職場における活動を充実していきます。特に要望の多い職場巡視活動の実践について取り上げ、経験交流を重視します。

(7)研修会等への講師の派遣

 会員、地域で開催する安全衛生セミナー、研修会等に講師を派遣します。また、安全センター理事や他団体の講師、学識経験者等を講師として主催者の要請にあわせた派遣を行うほか、より幅広い講師陣づくりに努力します。
 勤労者のライフスタイル構築のための様々なノウハウを豊富に持っている労金、全労済、住宅生協の活動ともタイアップした取り組みができるように努力します。

3. 広報・情報提供活動
(1)機関誌「安全衛生Journal」の発行等

 安全センターの活動や調査・研究の結果などを掲載するとともに、法制度の改正や安全衛生に関するポイント解説面を充実させます。また、安全衛生や労働基準に関する最新情報や各県・他団体の取り組み等の情報を提供します。
 安全衛生センターのホームページの充実をはかり、定期的な情報の更新に努めます。また、不定期発行の「北海道勤労者安全衛生センター情報(E−mail)」の継続発行に努めます。

(2)刊行物の発行

 調査・研究活動の結果をまとめ、各種報告書を作成します。会員と協力し、中小職場に役立つ諸テキストを作成します。

(3)相談コーナーの開設

 職場の安全衛生活動、労働災害や職業病、健康に関わる相談に対応するため、連合北海道とともに引き続き日常的な相談活動を継続します。特に秋と春に集中相談日を設けます。
 日本産業カウンセラー協会北海道支部と協力し、勤労者の使いやすい「ストレス・メンタルヘルス無料電話相談」活動を充実・継続します。

(4)資料、図書の収集と活用

 安全衛生活動全般に関わる最新の資料や図書、ビデオなどの収集と更新を行います。また、各都府県安全センター、安全衛生活動団体等と刊行物の交流・交換活動を行います。  会員等への情報サービス機能を高め活用を促進するよう、所蔵する資料・図書類をリスト化し紹介していきます。

4. 政策・制度に関する活動

 調査・研究活動や相談活動などを通じて、労働安全衛生に関する政策・制度要求を掘り起こし、連合本部、連合北海道はもちろん、会員、地域、関係団体、医療機関などと連携して実現活動に取り組みます。

5. ネットワークの拡大

 安全センターの活動と体制を強化・充実するため、会員、特別会員の拡大を進めます。
 事業活動を通じて、連合各県安全衛生センター・研究機関、関係団体、医師、学者、行政等とのネットワークを形成し、活動基盤の強化につながるよう取り組みます。
 各種審議会委員、労災防止指導員、労災保険審査会参与との連携・連絡体制をつくり、労働行政への意見反映や行政情報の活用に取り組みます。

6. NPO法人への変更

 社団法人の制度変更(一般か公益か)を機会に、北海道NPOサポートセンターと連携し、NPO法人化をめざした作業を進めます。

以上

角丸飾り

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